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Hitachi

Hitachi Social Innovation Forum 2019 TOKYO

特別対談2

10月18日(金)15:15〜16:30

人間中心の地域社会をデザインする
〜ビジョン・シビックテック・協創が導く未来〜

特別対談写真

太田 直樹
(株) New Stories 代表
元総務大臣補佐官

佐藤 拓也
CODE for IKOMA 代表
YuMake合同会社 代表

【モデレータ】
北川 央樹
(株)日立製作所
研究開発グループ
東京社会イノベーション協創センタ長

対談に先立ち、モデレータを務める日立の北川から、本日のテーマを紹介。「企業は、SDGs、Society 5.0などの社会課題解決に向けた取り組みを新たな事業機会と捉えています。地域社会における課題解決を図る取り組み、メガトレンドを参照しながら、活気溢れる地域社会の実現に向けた協創について展望したい」と挨拶。三人の対談がはじまりました。

創造社会に向けた日立の考え方

まず、社会課題解決とSociety 5.0の実現に向けた日立の社会イノベーション事業の取り組みを紹介。「社会課題はさまざまな要因が複雑に影響しあうことで生じるため、単純な施策で解くことは難しい。また、ステークホルダーの社会価値・環境価値・経済価値をバランスよく向上させるためには、行政・企業・住民・NPOなどとの『協創』がポイントになる。また、協創を成功させるためには、望ましい社会システムの姿を『ビジョン』として描き共有することからはじめる必要がある」と考えを説明。創造社会の実現に向けた東京大学との協創として、住民一人ひとりが主体的にデータを活用することで、社会課題解決と経済成長を両立させ、持続的に都市を刷新するコンセプトの提案を映像で紹介しました。

共に考え、共につくる未来 スマートシティ2.0のグローバル協創

特別対談写真
プレゼンテーションする太田氏。

Society 5.0の戦略策定と地域の活性化に携わってきた太田氏より、冒頭、100年に1度の劇的な変化がわずか10年で起きたことを撮影された2枚の写真を比較し、『Society 3.0(工業化社会)』、『Society 4.0(情報化社会)』を紹介。IT・デジタルテクノロジー市場における今日の日本の状況について、事例と共に厳しく評価。2017年の世界経済フォーラムでの「デジタル技術は社会を良くするか?」という質問に対して、「Yes」と答えた日本人は、わずか22%だったことも紹介(Global平均42%)。

「しかし、変化の兆しもあると思っています。」と続けます。その例として、スマートシティを牽引する政府と自治体による「新たな官民連携」や、市民が「自分ごと」として地域に参加する取り組みとして、スマートフォンで撮影した写真を使った道路・公園の管理をする千葉市、市民が法律を作るところから参加する海外の取り組みなどを紹介。「会津若松は市民が参加して、企業やソーシャルセクターと行政が連携し、非常にすばらしい形で街づくりを行っています。それにより、IT人材の雇用も生まれ、国内では桁違いに高いデジタルの行政サービスもあり、最新技術は海外からも注目されています。こうした形で、会津若松は発展をしており、日本にとっての良いモデルになるんじゃないかと思います」と紹介しました。

次に、デジタルを使った都市づくりの要素を3つ紹介。1つ目は『インフラ』、例えば5Gだったり、認証IDのようなテクノロジー。2つ目は『アプリ・サービス』、例えば自動運転や健康サービス、教育や防災のサポート。そして、特に注目されているのは3つ目が、『市民が参加して持続可能な仕組み』。「会津若松や日本のほかの地域でも、いろんなステークホルダーがともに考えて、ともに将来のビジョンを創って、デジタル化を実装していくというところが出てきています。そういう観点で見ると成功の定義も変わってきますし、スマートシティに関しては、世界のどこが先頭かわからない状態だと思います。アメリカは巨大企業が中心で、中国は国がトップダウンでやっています。それに対して、異なるモデルが日本では出てくるんじゃないかと思っています」と期待を込めて話されました。

グローバルと日本

続いて、北川からの質問を受け、国によって異なる個人情報に関する動き、EU一般データ保護規則(GDPR)などに、我々はどういう備えをしなければいけないのかについて太田氏が答えました。

「今考えなければならないのは、企業がグローバルに活動している中で、個人情報に関するルールがバラバラであること。直近の話では、EUと日本が個人情報に関する互いのルールが十分であると『十分性認定』を2018年に結びました。これが個別企業や個別サービスなどに、どう影響してくるのか、徐々に明らかになってくるかと思います。一方で、ルールに関する情報や国内の専門家が、まだまだ足りていないという状況です。行政が持っているデータもあれば、企業や個人が持っているデータもあり、これをどう活かすのかを具体的に考えていく必要があります」と太田氏は答えました。

北川からは、海外のトピックスとして、バルセロナでの住民によるセンサー設置の事例を紹介。「企業や行政が思ってもいないところにセンサーを設置し、自らが活用できるデータを取っています。住民が自ら率先して設置しているので、生きた貴重な使えるデータを集めることができています。ヨーロッパは草の根運動に対して、行政がサポートしていたり、指導もしていたりしますので、見習うべき点が多いと思います」。

CODE for IKOMA シビックテックの事例

特別対談写真
CODE for IKOMAの説明をする佐藤氏。

奈良県生駒氏で、ITを使って地域課題を自分たちで解決していこうという活動「シビックテック」に取り組む佐藤氏より『CODE for IKOMA』について紹介。

「CODE for IKOMAは、2014年1月から活動を開始。現在は市民活動団体として、IT技術者やデザイナーなどのメンバーが主体となり、奈良先端科学技術大学院大学の学生や先生方にも協力をいただきながら活動しています。」

コアメンバー以外にも多様な層の方に参加いただく為、『各自がやりたいことをやる、活動できる時に活動する、上下関係のないフラットな場である、活動内容や成果物がオープンである』という運営上のポリシーを説明し、シビックテック『3つの効能』についての話に移りました。

1つ目の『ボトムアップ型オープンデータ公開』として、120を超える地域で横展開されている『5374(ゴミナシ).jp』の生駒市版アプリや、生駒市図書館の司書さんのおすすめ本を検索しやすくしたアプリ『なによも』など、行政側にデータの具体的な利用シーンを示すことで、オープンデータ化してもらう取り組みを紹介。2つ目の『公民連携の素材としてのオープンデータ活用』として、2016年に開催された『IKOMA Civic Tech Award 2016』において最優秀賞となった、給食の献立とアレルゲンやカロリーなどが確認できるアプリ『4919(食育) for Ikoma』を紹介。3つ目の『人材の流動性を高める』については、設立時には会社員が多かったのが、フリーランスや自営が増えたことをグラフにて説明。

佐藤氏はプレゼンテーションの最後に、地域課題解決におけるスキームの変化とイノベーション創出における課題を紹介。ビジネスで成立する地域課題解決は企業が担い、課題を発見する部分やアイデアのプロトタイプを出し合うといったような『非貨幣文化』でなければ成り立たない部分をシビックテックが補うことで、良い住み分けができると説明。課題としては、ITリテラシーの乖離や技術を通訳できる人材の不足、活動主体がバラバラでNPOなどの地域活動と融合していく必要性、継続的活動の事業モデルが不確立で初期投資が不足しているということを挙げられました。アプリの運用についての北川からの質問に、「データメンテナンスは全部手弁当でやっているのが現状」と答えました。

データ活用の在り方、組織運営

太田氏より、佐藤氏が最後に取り上げた事業モデル確立の課題について、打開策のヒントとして、数年前から推進されている自治体のEBPM(Evidence-based Policymaking:証拠に基づく政策立案)、活動の実績がもたらす状況の変化や成果を示すデータの評価に基づき政策を立案、財源を確保していこうという動きを紹介。また、ある自治体で採用された経験や知恵を共有する、自治体マーケットプレイスのような動きがあり、横展開への障壁が下がっていることを紹介しました。

その後、北川から日立の地域協創事例として、市民の移動データなどを可視化することにより、街づくりにおける合意形成を支援する松山市との取り組み、地場野菜や地域通貨をテーマに、デジタル技術を活用し住民・農家・飲食店の間に新しい関係を生み出す国分寺市での事例を紹介しました。

活気溢れる地域社会の実現に向けて

特別対談写真
モデレータを務めた日立の北川。

最後に「ビジョン」「協創」「シビックテック」のキーワードを軸に、いくつか質問を行いました。

まず、シビックテックを進める上で求められるリーダー像については、佐藤氏が「コーディネート力や発想力を持っている人っていうのが重要だと思うんですが、特定の利益に偏ってしまったりすると上手くいかなかったりするので、フェアな関係で進められる人が必要です」と回答。太田氏からは、「イノベーションの定義は新しい結合だと思いますが、閉じた中では出てこないので、組織を越境できる人がリーダーになるかなと思います。しかも複数いると良いですね」と回答をいただきました。

次に、シビックテックを進めるにあたり、スモールスタートから投資を受けて広げ、運用を含め回収を得るためのビジネスサイクルを回すヒントを太田氏に尋ねました。「新たな動きとしては、ソーシャル・インパクト・ボンドがあります。きちんと成果を測りエビデンスを取って、劣化コピーにならない形で展開していくような方法論もようやく手にしつつある状況です。」

最後に、太田氏からは企業に期待するメッセージとして、「日立を含め、企業は自社で保有しているデータや人材をオープンにしてほしい。そうすれば新たな価値が生まれ、社会的評価も高くなる」とのリクエストをいただき、佐藤氏からは行政や企業へのお願いとして「こうした活動は、ハードルが高そうに見えるかと思いますが、気軽に参加していただければ、きっと課題の種なども見つかるんじゃないかなと思います」とシビックテックへの参画の呼びかけがありました。