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Hitachi

Hitachi Social Innovation Forum 2019 TOKYO

特別対談1

10月17日(木)13:30〜14:45

サービスイノベーションの力
〜デジタル・AIの進化がもたらす新たな価値〜

特別対談写真

藤川 佳則
一橋大学 副学長補佐
一橋ビジネススクール
国際企業戦略専攻
MBAプログラムディレクター&准教授

石山 洸
(株)エクサウィザーズ
代表取締役社長

【モデレータ】
赤津 雅晴
(株)日立製作所
研究開発グループ 技師長

対談に先立ち、モデレータを務める日立の赤津が「社会課題解決のためにデジタル技術を活用した『サービスイノベーション』の最前線と新たな価値創出の方向性について、サービスの理論と実践、御二人の立場から探っていきたい」と挨拶。サービスイノベーションを牽引する三人の対談がはじまりました。

サービス・マネジメント 「価値づくり」の「レンズ」

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プレゼンテーションする藤川氏。

サービス・マネジメントの第一人者である藤川氏は、まず冒頭に、UberやFacebook、Alibaba、Airbnbのビジネスモデルを例に「何か今面白いことが起こっている」という『TechCrunch』編集者トム・グッドウィン氏の言葉を紹介。

「価値を創出するのは企業であるというのが大前提でした。しかし、先ほど紹介した企業では、お客さまがその価値づくりに参画をしており、バリューチェーンというレンズには見えない世界が広がりつつある」と指摘し、いま地球規模・数十年単位で起きている3つのキーワードを紹介。世界経済はサービス化(SHIFT)して、産業の垣根はあいまいに(MELT)なってきており、世界経済の重心が北緯31度の北から南へ動いている(TILT)ことを、データや具体例を交えながら説明しました。

次に、価値づくりのレンズの変遷として、「レンズ1(グッズ・ドミナント・ロジック):モノかサービスか、企業が価値を創造する」、「レンズ2(サービス・ドミナント・ロジック):モノもサービスも企業と顧客が協創する」、そして、「レンズ3(マルチ・サイド・プラットフォーム):価値協創も価値獲得も複数の相手と行う」について解説。

そして、「皆さんのレンズは、ポストデジタル仕様になっていますか?」と問いかけ、デジタルをデフォルトにして、その中にリアルを活かしていくというポストデジタルの考えを示し、今後無意識下で発生するデータがサービスイノベーションの可能性として重要であると指南してプレゼンテーションを終えました。

サービスイノベーションの実践

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介護現場のAI活用の説明をする石山氏。

続いてAIを活用し革新的なサービスを実践している石山氏は、AIのような技術でこれまで解けなかったような問題が解けるようになってきている中で、自分自身が何をやりたいかという目的意識(Sense of Purpose)を改めて考える時代になっていることに触れ、『AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する』という目的意識に至った経緯を紹介。

そして、高齢者の比率と社会保障費が増えている状況を示し、AIを活用した持続可能なトランスフォーメーションの重要性を説明。実践事例として、介護のベテランと初心者のケア映像をAIで解析し、ケア品質を改善することで、介護者負担感の軽減と被介護者からの介護拒否の改善を報告しました。

「AIの技術が向上してきたことで、科学的な検証により、介護とは何かということ自体が証明され始めているようなイノベーションが起きています。今まで科学になっていなかったものを、科学にしていくことが1つの貢献です」と述べました。

さらに、AI企業・研究機関が持つ科学系エビデンスに加え、医科学系エビデンス、経済学系エビデンスを通じて、介入効果を可視化する考えを紹介。健康状態の悪化が予測された人を対象に優先的に介護施策を実施することで、症状の改善・重症化予防と社会保障費の削減を図ることができ、その削減費用の一部を社会を良くしていくためのアフィリエイトプログラムとすれば、新たなビジネスモデルになると説明しました。

そして、自らが社長を務めるエクサウィザーズ社のメンバー構成や、囲碁(Alpha Go)と介護(Alpha KaiGo)におけるゲーム構造の違いを例に、さまざまな当事者が参画する「インクルーシブ・イノベーション」による社会的需要性の重要性を解説。AI研究者だけでなく、認知症の本人も学会員として参加して開発を行う「みんなの認知症情報学会」を紹介しました。

藤川氏からは課金についての質問があり、「例えば、社会保障費の負担という意味ですと、ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)など、いろんなタイプのビジネススキームが生まれており、課金についてもゼロベースで考え直そうということが始まっていると思います」と答えました。

価値創造に向けた日立の取り組み

赤津からは、藤川氏より紹介のサービス・ドミナント・ロジックの考え方に基づく事例として、課題解決のソリューションをお客さまと一緒に作り上げていくための基盤「Lumada」を紹介。協創を通じたお客さまの経済価値と環境価値の向上や、異業種間を繋ぐことによるエコシステムの充実、また、マルチ・サイド・プラットフォームによる価値協創事例としてハビタットイノベーションプロジェクト、環境変化を生き抜いてきた生物の「知」にも学ぶ取り組みについて触れました。

新たな価値を生み出していく為にはどのような「人財」が必要か

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モデレータを務めた日立の赤津。

続けて、赤津からお二人へ、「サービスイノベーション」を創発し事業化していく上で、どう人財をみつけ、育成すれば良いか質問をしました。

藤川氏は、「人財の育成に関しては、新しい形でサービスを考えることについて、レンズを掛け替えるところから始めないといけない。若い世代の人財育成以上に、それを受け止める組織のトップマネジメントの皆さんのレンズが変わっていないと、彼らの能力を発揮することができないことになる。何をもって業績を評価するのかみたいな話も変わっていかないと、育成した人財が活躍できる場もないかと思います」と答えました。

石山氏は、「我々の会社ですと、実はAIエンジニアは半分くらいで、残りの半分はドメインエキスパートの人が沢山います。何が社会課題なのかわからないとか、何がこの社会課題を解けるテクノロジーなのかわからないということから、こうした人たちと一緒になって集まりながら、お互いに気づきあうことによって、個々の専門性と視界のレンズを掛け替えるみたいなことをOJTとして回すみたいなことを意識しながら経営をしています」と述べました。

「AIの専門家と介護の専門家では言葉がかみ合わないこともあると思うんですが」という赤津の質問に対し、「チームが1つのミッションに向かって協働するっていうのは難しいと思うんですが、大きなテーマとして社会課題みたいなものがあると、お互いにそのプロトコルとか言語自体をどうしたらその課題を解決するために最適なのかってことを、能動的に考え始めるように変わっていくと思うんですね。そこの仕掛けが重要なのかなと思います」と石山氏が答え、藤川氏も「個人の中に専門性が複数ある方がつながりやすく、そういう集団の方が大きな成果を発揮するのを日々目の当たりにしています」と答えました。

ビジネス視点で「サービスイノベーション」をどう起こし、発展させるか

最後に、赤津からお二人に社会課題解決をいかにマネタイズするか、秘訣を尋ねました。

石山氏は、介護ビジネスを例に、4種類の課金パターンを提示しました。「1つ目は、そもそもAIで介護現場で何をやったら良いのかわかっていないので、いろんなR&Dをやらないといけない。いろんな企業がAIのR&Dをやっていると思うんですが、そこの研究開発マーケットがあると思います。2つ目は、その中から具体的に成功したものをプロダクトやサービスとして、スケールさせていく時にお金のやり取りがある。3つ目に、成果連動のスキーム、パブリックセクターとの連携による新たな収入源を得るという方法がある。4つ目が、グローバル。超高齢社会を日本以外の国も迎えているので、そのマーケットに入って、さらにビジネスを伸ばすことができると思います。」 藤川氏は、「交換価値で課金するとか、使用価値で課金するとかにすると『2×2』になるんですよね。これにサイドの数が増えると『2×2×サイド数』になり、これが立体になって、どことどこを結べばビジネスになるのかが、その事業に責任を持ってる方の腕の見せ所だと思います」と答えました。

さらに持続可能なサービスイノベーション実現の秘訣を尋ねられ、石山氏は「自分たちが取り組むビジネスが、本当に社会課題を解決するんだ、というところから逃げないことだと思う。また、経済的価値と環境的価値と社会的価値が1つのプロダクトやサービスを生んだ時に、それぞれがデータとしてどういうふうに変化するのかを可視化したりモデル化したりすることが、これからのテクノロジーだとできると思うので、そこをきちんと捉えていくこと、そこを設計する時にサービス・マネジメントやプロダクトマネジメントをしている人間が、嘘をつかないってことが凄く大切になってくると思います」と答えました。藤川氏は「どういう成果を上げているのかが可視化されて、フィードバックで返ってくるみたいなことが、次のモチベーションになってダイナミックにつながっていくと思うので、それが可能になってきている時代だから駆使しない手はない」と答えました。

そして、対談の最後を締める言葉として、石山氏は「まさにこの嘘をつかない社会課題解決っていうのは凄く大切だと思うんですが、ここにいらっしゃる皆さんとも一緒に実践しながら、社会課題を解決し、次世代へのレガシーを残すということをできればと思います」と述べ、藤川氏からは「皆さん、どういうレンズをかけていらっしゃいますか?レンズをかけていること自体を意識されていますか?別のレンズを試してみませんか?」という問いかけが再度投げかけられました。