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Hitachi

Hitachi Social Innovation Forum 2019 TOKYO

特別講演

10月18日(金)9:30〜10:30

The Story of Great Innovators &
How We Nurture Breakthrough Innovation in Our Lives
偉大なイノベーターたちの物語
〜画期的なイノベーションの起こし方〜

特別講演写真

メリッサ・シリング
ニューヨーク大学
レナード・N・スターン・スクール・オブ・ビジネス教授

イノベーション研究の第一人者であるシリング氏は、講演の冒頭、偉業を成し遂げた世界的・歴史的なイノベーターたちに共通する資質、戦略思考に注目した経緯について、エピソードを紹介しました。

「2010年当時、スティーブ・ジョブズは非常に痩せていて、病気だと言われていました。私の学生が『Appleはどうなっちゃうの』と聞いてきました。そこで、彼の偉業から学ぶことができれば、亡くなった後も、その遺産として残すことができると思ったんです。私は1年間スティーブ・ジョブズの研究をすることにしました。ジョブズの研究をしていて気づいたのが、他のイノベーターたちとの共通点でした。」

「毎日同じ服を着ていたり、学校のカリキュラムに合わせることができなかったり、変な共通性があるんですが、これがイノベーションにつながっているのではないかと考えました。そこで、複数のケーススタディの研究プロジェクトを進めました。いろいろな被験者をいくつかの基準で選び、その中で全てのイノベーターとの共通性と違いを見出そうとしました」と説明。

「こうした人たちには、生まれつき特別な才能があるのかもしれませんが、環境も関係あるということなんです。彼らを研究して分かったことは、誰もが人生の中で、イノベーションを生む可能性がありうるということです」と続けました。

そして、イノベーションを生む資質と思考について、イーロン・マスクやニコラ・テスラ、アルバート・アインシュタイン、ディーン・ケーメンなどのイノベーターを例に、5つのポイントを取り上げました。

Crazy Smart
「全てのイノベーターというのは、天才だということがはっきり分かるぐらいのインテリジェンスを持っています。彼らの内の何人かは、信じられないほどの記憶力を持っています。例えば、イーロン・マスクとニコラ・テスラ。この二人は、まるでカメラで写真を撮るように覚えることができるということで有名です。それから、トーマス・エジソンとマリー・キュリーは、非常に長い間覚えておくことができるということで有名でした。記憶というのは非常に重要なツールです。それから実行力、つまり実際にそれを使って何かをするという力です。この実行力があれば、本当に短い時間でいろんなことをやることができます。つまり記憶の中から引き出して何かを実行することができるわけです。」

「我々は皆、凄い記憶力を持って生まれるわけではありません。しかし、外部記憶というものが使えます。携帯電話もコンピュータも外部記憶として使えます。つまり、多くのことをテスラと同じように、テスラが頭の中でやったことを、我々もトレーニングをしっかりやればできるんです。」
Extreme Self-Efficacy
「自己効力感です。自分に能力があって自分はゴールを達成することができる、困難を克服できる、ということです。イノベーターも最初から自信を持っているわけでありません。しかし、問題解決能力は100%ありました。解決できるという自信があったので、解決できるまでやりました。」
A Sense of Separateness
「イノベーターは世界の中でも最も孤独な人たちだったんです。それから内向的な人もいました。社会のルールは自分には当てはまらない、自分は社会の人間ではないという感覚。実はこれが価値があるわけです。」

「アインシュタインの場合には『自分の理論が一番正しいんだ』と彼はいろいろな問題を定義しました。彼は論文を発表した時には、『いったいこれは誰なんだ、ニュートンの法則を無視するってどういうことだ』と、みんなから批判されたわけです。しかし、マックス・プランク(物理学者)が彼の論文を見て『いや、いくつかのことは正しいよ』と言ったわけです。そうすると、彼のアイデアを実際に実験してみようというアイデアが出て、そしてこれによって潮目が全く変わってしまったわけです。
An Idealistic Goal
「何かのために働くことは、自分のためよりも重要です。自分が信じていること、他の人のためにこれが重要なんだということが信じられれば、より一生懸命、より長く働く。そして批判に対しても強くなります。そして持久力も生まれるわけです。」

「ディーン・ケーメンは、"スリングショット"と言われる浄水器を作りました。そして、浄水器を買うことができない人のために5,000万ドルを出すことにしました。周りからは『こんな小さな会社なのになんて大金を使うんだ』、『こんな浄水器何か売れはしないよ』と言われても、本人は『失敗してもいいんだ。世界の状況を見てくれ、世界はひどい状況にある。これを改善したいんだ』と答えました。つまり、収益よりもミッションが必要だというふうに言っているわけです。」
Timing and Resources
「タイミングとリソース。これは運ということに関係しています。つまり、誰か知り合いにすばらしい人がいるとか、良いタイミングがあるとかも関係あります。スティーブ・ジョブズは、非常に理想主義的で性格も変わっていました。しかし、適切なタイミングで、適切な場所にいたわけです。ですから、運はとても重要です。それからイノベーターはものすごい読書家です。例えば、ある分野に興味を持ったら、完璧に勉強することができたわけです。」

「それから、外部の人間つまりアウトサイダーというのが大きな変化をもたらすことができるということです。越境性ということが非常に重要になるわけです。ドメインの外側から来る人たちというのは、これまでの歴史を引きずっていません。ですから、これまでの常識を完全に無視して新しいことをやることができます。アインシュタインは学術界の人間ではなかったので、ニュートンの法則を無視することができた。アウトサイダーというのは重要だし、あえてアウトサイダーになることも重要です」

特別講演写真
講演するシリング氏。

シリング氏は5つのキーワード紹介において、我々がどのような工夫や努力をすればイノベーションを起こす、あるいはイノベーターを生む可能性を育てられるかヒントを提示しました。

「これから先もっともっとイノベーションを生むことができる人たちが、世の中にはたくさんいます。自分ができると思っていない人たち、自分の能力に気づいていない人たち、たくさんの人たちがいるわけです。我々はイノベーターの卵を発見して、そしてブレークスルーを生むような環境を与えることができるんです」とメッセージを送って講演を終えました。