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Hitachi

Hitachi Social Innovation Forum 2017 TOKYO

講演2

11月2日(木)13:00-14:00

脳の中で何が起こっているかを理解し
最高のパフォーマンスを引き出す 

アイデア創出のための認知科学入門
〜イノベーションとストレスの関係論〜

シアン・バイロック
米・バーナード・カレッジ総長
『「首から下」で考えなさい』 著者

講演写真

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米・バーナード・カレッジ バイロック氏

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ストレスがクリエイティビティにも影響を与えることを説明するバイロック氏

講演の前半は、ストレスによる前頭前野の機能低下が引き起こす影響について2つの事例で解説。まず、全英オープンの優勝を逃したゴルファーの失敗を取り上げ、ストレスが高まると間違った方向に注意を向けてしまうことを説明しました。
「本来は自動操縦のように自然にこなすべきことに注意を払い過ぎてしまったのです。注意を払い過ぎないようにするには、結果にのみ集中することです。ゴルフであれば、ボールをどこに飛ばしたいかに集中します」(バイロック氏)。

次に、前頭前野の機能低下が、クリエイティビティにも影響を与えることを、コーネル大学の事例で紹介。重要な医師国家試験の準備をしている時に、どのようなストレスを感じているのか、脳がどうなっているのかを調べるために、国家試験を受ける学生と受けない学生に分け、柔軟な発想が必要なクイズに答えてもらいました。
「試験のストレスを抱えている学生の前頭前野は、ほかの部分との接続が上手くいっていませんでした。そして、クリエイティビティも落ちていました。つまり、柔軟な発想ができなくなっていたのです」(バイロック氏)。

続いて、脳機能回復のための有効な手段について解説。
「少しの休憩をとることが有効です。研究の中でわかったのは、少しの休憩でも効果があるということです。休憩中も脳は無意識に問題を考えています。休憩から戻ってくると、問題がクリアに見え、新しい答えが新しい方法で見えてくるのです」(バイロック氏)。

睡眠もまた回復のための有効な手段であることも、睡眠学習で歌を覚える鳥の話を交え解説しました。
「さらに、ほかの人と話をすることも解決につながります。自分だけでは解決できなかった問題が、協力すれば解決できることもあります。相手が正しい答えを持っていなくても良いのです。一緒に何かをするというだけでも、より良いつながりが生まれ、より良いアイデアが生まれます」(バイロック氏)。

また、プレッシャーで必要なコミュニケーションをとることができない場合、最初に要約することの大切さを、タイトルのない長文を見せて解説。社会イノベーションを起こす組織作りには、社会的な感受性と人材の多様性が重要だということにも言及しました。
「問題に詳しい人や頭の良い人を集めることよりも、ほかの人の考えていることを読み解く力が重要なのです。また、順番に話を聞くということも大切です。意見を共有し合えば、より良い答えに導くことができます。そして、女性のメンバーが多いほど、より良い成果が得られました」(バイロック氏)。

ストレスによる前頭前野の機能低下が、感情のコントロールに影響して、集中力を阻害することについても解説しました。
「数学恐怖症の人がこれから数学をやると思っただけで、痛みを感じる時と同じ部分が活性化して、神経のアラーム信号が出て、必要なことに集中できなくなります」(バイロック氏)。
その克服法として、カナダの水泳チームが行った「考え方を変える訓練」を紹介。集中力の回復方法として、自然の中に身をおいたり、窓の外を眺めたり、自然の写真を見るだけでも効果があることも説明しました。
「脳のトレーニングには瞑想も有効です。1ヶ月に11時間のわずかな瞑想でも、脳の構造を変えることができました」(バイロック氏)。
プレッシャーに打ち勝つには、本番となるべく同じプレッシャーの中で練習することも重要であることを、バスケットボールチームのフリースローの練習を例に説明しました。

最後に、顔の部分だけのテニスプレーヤーの写真を見せ、勝ったのか負けたのかを当てるクイズを出し、身体がコミュニケーションに果たす役割を解説。ストレス下でのパフォーマンスを引き出す対策として、考えていることや感情を書き出すことが有効であることを付け加えました。
「人のパフォーマンスの裏にどういった科学があるか、脳の中で何が起こっているかを理解していただければ、重要な局面でプレッシャーがかかっている時も、適切なテクニックを使って最高のパフォーマンスを引き出すことができるのです」とメッセージを送り、講演を終えました。