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Hitachi

Hitachi Social Innovation Forum 2017 TOKYO

特別講演

11月2日(木)9:30-10:30

伝統的な部族社会から学ぶ4つの解決策
高齢者活用と交渉術、紛争解決方法、危険回避能力

伝統と未来をつなぐ。
〜現代社会への提言〜

ジャレド・ダイアモンド
ピューリッツァー賞受賞作家(『銃・病原菌・鉄』著者)
科学者

講演写真

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ピューリッツァー賞受賞作家/科学者 ダイアモンド氏

講演写真
伝統的な部族社会について説明するダイアモンド氏

ニューギニア島でのフィールドワークを終えたばかりのダイアモンド氏は「私が調査を始めた当時、結納の相場は豚4頭でしたが、友人の奥さんは大卒だったので豚250頭払いました。本当に価値の高い奥さんです」とジョークを交えながら、現代社会と伝統的な部族社会との違いについて語り始めました。
まず、長い人類史のほとんどが伝統的な社会であり、近代的な社会が発展したのは、わずか1万年ほど前からであると指摘。
「我々が当たり前だと思っていることは、人類の歴史の中では目新しいものです」(ダイアモンド氏)。

次に、現代社会では対面による直接的なコミュニケーションが減り、モノを書いて伝えたりする間接的なコミュニケーションが増えていることに触れ、伝統的な部族社会では生涯同じ人たちと暮らしており、知らない人と会うことはありえないことであり、土地や財産を奪うために来るよそ者と出会うことは危険だと考えられていると説明しました。
「日立の東原社長と昨日初めてお会いしましたが、恐ろしいとは感じませんでした。私は東原社長の豚を盗もうとしなかったし、彼が私の豚を盗むこともなかったからです(笑)」(ダイアモンド氏)。

さらに、伝統的な社会は変化が少なく、すべての伝統的な社会は似ている一方で、伝統的な社会は多様な面も持っていることを説明。
「ニューギニア島だけでも千の異なる部族が、千の異なる言葉を話しています。これは千の異なる実験であり、千通りの子育てや健康維持の方法があります」(ダイアモンド氏)。

続いて、伝統的な部族社会から学べる4つの解決策を紹介しました。
1つ目の高齢者活用では、台風で食料が採れなくなった時、普段は口にしない木の実を食べて飢餓を切り抜けた経験を持つニューギニア人の女性が、自らが生き字引となりその経験を飢餓を生き抜く解決策として語り継いでいるエピソードを紹介。このように高齢者の経験を活用するためには、定年制度の見直しが必要だと訴えました。
2つ目の交渉術では、石油会社の辣腕弁護士集団を手玉に取ったエピソードを紹介。優れた観察力を持つニューギニアの人々は、儀式などで時間稼ぎを行い、交渉役や契約条件をコロコロと変え、弁護士集団をイライラさせ、交渉に成功したことを語りました。
逆に、現代社会の劣化した社交スキルの例として、スマホでやり取りするだけで会話ができないカップルの話を紹介。スマホ禁止デーなどを設け、対面コミュニケーションを強化することも必要だと説きました。
3つ目の紛争解決方法では、交通事故で知り合いの子供を死なせてしまった友人のエピソードが語られました。現代社会では、会社や個人の利益が優先され自分に有利な結果をもたらすことが重要だが、伝統的な社会では、当事者同士が知り合いであり、良好な関係を保つことの方が重要だと説明。
「友人は子供を亡くした側の気持ちになって涙ながらに謝罪しました。すると、加害者の苦しみを理解した被害者家族は彼を許したのです。感情的に落着することが重要なのです」(ダイアモンド氏)。
4つ目の危険回避能力では、若き日のダイアモンド氏が大木の下で寝ようと提案すると、枯れ木が倒れてくると断られた経験を紹介。そんな心配は大げさでパラノイアだと感じたが、毎晩枯れ木の下で寝た場合を計算してみると、3年以内に枯れ木が倒れて死ぬことになり、彼らの心配は建設的なパラノイアであると納得したことを解説しました。
「我々はテロや航空事故などの危険は過大評価しがちだが、喫煙や塩分過多な食生活、シャワー中の転倒など日常的な危険を過小評価している」(ダイアモンド氏)。
シャワー中に転倒する確率自体は低くても、毎日繰り返すことで死亡リスクが高まるように、企業活動においても日々の業務にこそ危険は潜んでいると警告します。

「社会イノベーションは、革新的な解決策を探求することかもしれません。しかし、すでに発明された解決策を再発見することでもあります。ニューギニアには何千もの部族社会があり、多くの実験を行ってきました。子育ての実験、高齢者の扱いの実験、危険への対応策の実験です。彼らの編み出した解決策から我々は多くのことを学べるはずです」と語り、講演を終えました。