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Hitachi

Hitachi Social Innovation Forum 2016 TOKYO

特別講演

10月28日(金)10:00-11:00

無秩序を好み、変化に恩恵を受けるアンチフラジャイルが
不確実性の時代にイノベーションを起こす

不確実性を富に変える逆転の発想
〜イノベーションの進め方〜

エッセイスト
ニューヨーク大学工学研究科教授
リアルワールドリスク研究所所長
ナシム ニコラス タレブ

講演写真

講演の冒頭、タレブ氏は「アンチフラジャイル(抗脆弱性)は、ブラック・スワンへの対抗策です。まずはブラック・スワンについて話をしたいと思います。ほとんどありえない事象、誰も予想しなかった事象、それがブラック・スワンです。ブラック・スワンの話をする時に七面鳥の話をよく例にします」と言って、七面鳥に起こった1,001日目の悲劇を例にブラック・スワンを説明。1,000日間大切に育てられた七面鳥は、それが未来永劫続くと信じて疑わずに1,001日目に絞められてしまいます。

講演写真
エッセイスト ニューヨーク大学工学研究科教授 リアルワールドリスク研究所所長 タレブ氏

講演写真
グラスを例に古いテクノロジーの方が長生きすることを説明するタレブ氏

「フラジャイル(脆弱性)の反対を質問すると、ロバスト(堅牢性)だと答えが返ってきますが、しかし答えはアンチフラジャイルです。フラジャイルは無秩序や変化を嫌い、一方でアンチフラジャルは無秩序を好み、変化に恩恵を受けます。それは壊れてもなお価値が高まる日本の陶器の様なものです」(タレブ氏)。

火事のない森林は、いずれ大火を起こすという例をあげ、変化がないとリスクが高まることを説明。
「大きな嵐が来ると地下に立てこもる人もいますが、風車で儲ける人もいます。どんな災いでも誰かにとっての得になり得るのです」(タレブ氏)。
変化やストレス要因、過補償は、人間や企業、国を強くすることを、資源を持たなかった国が海洋国家へと成長した例や、自社システムを自らハッキングさせたネットフリックス社の例をあげ、説明しました。
2000年に起きたカリフォルニア危機が、あらゆるものを改善したことにも触れました。メールがソーシャルメディアへ、恐竜型ベンチャーキャピタルがクラウドファウンディングへと移行しました。

「世界のどこが成功しているのかを見るには、破綻率に注目してもらいたい。世界で破綻率が最も大きいのはシリコンバレーです。毎日の様に企業が倒産し、新しい企業が誕生します。そこには進化のメカニズムが存在しています。進化とはミスやエラーを恩恵に変えていくものです。DNAもそうなっています。我々が住んでいる地球という環境は変動性に恩恵を受けているのです」(タレブ氏)。

大きな石でできた輪の写真を見せ「これは何か分かりますか?これは車輪です。5,000〜6,000年前に発明され、社会に大きな変革をもたらしました。しかし、車輪の応用であるキャリーバッグの発明には6,000年を要しました。昔、スーツケースは車輪で転がすものではなく、手で持って運ぶものでした。こういうテクノロジー(車輪)があったにも関わらず、どうやって使ったら良いかがわからなかったのです。これも一つのブラック・スワンです」とタレブ氏は説明。
不確実性の時代を生き抜くには失敗から学ぶべきだと、薬品の副作用から新たな発見を見出す製薬会社の例をあげ説明し、また、機会を捉える柔軟性も重要だと説きます。元々ティファニーは文房具店でしたが、客の要望に応える形で宝石を扱う様になり成功しました。ビジネスプランをいつでも柔軟に変えられる様にして、方向転換がしやすい様にすることが大切だと説きます。
さらに、古い台所の写真を見せて、新しいテクノロジーよりも古いテクノロジーの方がより長く生き残って行くことを説明。
大型コンピュータがデスクトップへと移行し、デスクトップがラップトップへ、さらにラップトップがタブレットへと変化を繰り返して来たが、デバイスは変化しても、コンピュータというテクノロジーは生き続けていると説明。

「フラジャイルなものは確実に壊れる。過去四半世紀分のテクノロジーは衰退し、新たな四半世紀分のテクノロジーが取って代わる。電話はアプリに置き換わるが、グラスや椅子は生き残る」と説きます。
「企業でも同じです。長い歴史を持つ企業は、新しい企業よりも生き残って行く確率が高いのです。さらに、リスクにさらされていない企業よりも、困難を克服した企業の方が長生きするのです。時間と無秩序が企業を強くします」と不確実性の時代にイノベーションを起こすヒントを示唆し講演を終えました。