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Hitachi

Hitachi Social Innovation Forum 2016 TOKYO

講演3

10月28日(金)15:00-16:00

アンドロイドやロボット開発の発展が
人間自身の理解を深める

人間型ロボットと未来社会

大阪大学基礎工学研究科教授(特別教授)
ATR石黒浩特別研究室室長(ATRフェロー)
石黒 浩

講演写真

「私のアンドロイドが講演に行く機会が増えています。アンドロイドが講演に行くと見学会もできますが、残念ながら、本日は生身が来ました。皆さんは生身の私には興味がないと思いますが」と挨拶し、「アンドロイドがいなければ、私が講演に呼んでもらうこともない。私のアイデンティティは、私にはないのです」と続けました。

講演の前半は、ロボット開発と活用の現況に触れ、パーソナルロボットのキラーアプリケーションによる成功例などを紹介。共同研究していた日立の「EMIEW」についても、「案内など移動しながらのサービスに適したサイズ」と期待を寄せ、ロボット開発に取り組んだ自身のエピソードを披露しながら、ロボット開発と認知・脳科学の関係と、その融合が果たす役割を解説しました。

講演写真
大阪大学基礎工学研究科教授 ATR石黒浩特別研究室室長 石黒氏

講演写真
ロボット社会について解説する石黒氏

さらに、アンドロイドが出演する映画や演劇を観た観客が、アンドロイドに対して人間の様な心を感じたことを紹介。
「ところが、アンドロイドはプログラムされた動作や発話を順番に再現しているだけであり、そこには意識や感情はありません」(石黒氏)。
また、遠隔操作型のジェミノイドを操作するとジェミノイドに乗り移った様な感覚が得られることを紹介し、想像が補完するテレノイドと人間の存在感を感じる最小条件について解説しました。

講演の後半は、100年後と1,000年後の未来について語られました。
「100年後、仕事は減ります。新しい技術が次々と出てくるので、それらを学ばなければならない。しかし、技術を学べば少ない時間で効率良く仕事ができます。人生の大半は教育を受け、残りちょっとだけ仕事をする様になる」と述べ、進化した技術やロボットの活用で生産性は増し、仕事は1割で済むと予測。ただし、技術習得の能力差は拡大傾向にあり、この差を埋めることが課題だと説きました。
続いて、人間は遺伝子と技術の両方で進化し、技術による進化(能力の拡張)は、遺伝子による進化よりもはるかに速いと解説。

「人間とサルとの違いは、技術を使うことです。生身の動物的部分と大半を占める技術により、人間としての活動は成り立っています。人間の能力を拡張する新しい技術は、この世に生き残るという使命を帯びた人間にとって非常に魅力的です。それを手に入れ生活を豊かにすることが生きる目的であり、経済の発展を支えているのです」と続けた。

ここで、現在のアンドロイドがどれだけ進化しているのかを、「意図」と「欲求」を持つ最新アンドロイド「ERICA(エリカ)」で紹介。
これまでのアンドロイドやロボットの開発は、動作や発話のプログラムが中心で、定型業務をやるのに意図や欲求は不要でした。しかし、人間と親和的に関わり、人間の様な感情を持とうとすれば、意図や欲求が必要になる。自身が意図や欲求を持っていなければ、人間の行動からその意図や欲求を推定できません。「認められたい」「休みたい」という2つの欲求を持つERICAが、自分を美人だと認めない相手に不機嫌な態度をとる様子が、会場を大いに沸かせました。
コンピュータは加速的に進化し、ロボットは生命の限界を超える。最後まで苦労するのは、脳をコンピュータに置き換えるブレインアップローディング。
「しかし、1,000年経てば、少なくとも人間の脳は置き換えられるでしょう。そして、人間の動物的部分は全てなくなり、無機物で構成された機械人間が完成。さらなる人間の進化は機械化することであり、人間の仕事を機械に置き換えることが技術開発の歴史でした」と未来を予測。
「人間を定義するのに、生身の身体は要件に入らない。人類は無機物から生まれ、無機物に戻る。太陽や地球の異変を乗り越えて生き残れるのは、無機物化した人間だけです。人間や有機物が存在した理由を考えると、複雑な分子構造を持つ有機物は環境適応性が高い。一方で、その構造は壊れやすい。だから、人間と有機物の身体は、物質の進化・知能化を加速させるための手段にすぎない。これ以外に人間や有機物が存在した意味を考えることは難しい」と人間の存在理由にまで言及して、講演は終わりました。