ページの本文へ

Hitachi

Hitachi Social Innovation Forum 2016 TOKYO

講演1

10月28日(金)10:00-11:00

B2B型の効率的な仕組みを支えるという意識と
善悪双方のポテンシャルを制御していく意識が必要

2016年秋、世界の構造転換と日本の進路
ICTが拓く社会イノベーションの実現

一般財団法人日本総合研究所 会長
寺島 実郎

講演写真

「なぜ日立が社会イノベーションという言葉を使っているのかを、皆さんと考えながら進めたいと思います」という言葉で講演が始まりました。
まず、今夏に起きた2つのエピソードを披露。1つ目は、国際線の飛行中にライブ中継が観られる様になり、非常に便利で効率的に情報を得られる時代になったと実感したこと。もう1つは、旅先でヤモリを発見した際、同行者が瞬時に画像検索で詳細な情報を教えてくれ、誰もが簡単に詳細な情報を調べられる時代になったと感じたことでした。

「ここまでの話であれば、情報環境が一段と便利で効率的になったという話ですが、一歩踏み込んで考えると、断片的な情報を効率的に得ることができる人間は多くなったが、全体知を持って世界を見ている人間は少なくなっている」と危惧。「情報に効率的につながるということは、つながれているということでもある。ヤモリは私自身でもあるし、皆さん自身でもあります」と続けました。
「情報技術の進化のみならず、近代化や科学技術の進化は、善悪双方のポテンシャルを高めることを認識し、腹をくくっておかなければならない」(寺島氏)。

講演写真
日本総合研究所会長 寺島氏

講演写真
社会的課題をトータルに解決していくシステム設計の必要性を語る寺島氏

次に、ノーバート・ウィーナー著『人間機械論』の「非人間的な仕事から人間を解放するために、自分は電子計算機の開発に立ち向かう」という一節を紹介し、同時期に『鉄腕アトム』が連載を開始し、その十数年後にインターネットの起源であるアーパネットが完成し、人類が初めて月面に立ち、同時期に映画『2001年宇宙の旅』が公開されたことを紹介。

「スーパーコンピュータの性能が格段に進化した現在も、2001年宇宙の旅で描かれている様なAI型コンピュータは登場していないし、鉄腕アトムも生まれていない。汎用コンピュータの巨大化から、マイクロコンピュータをつなぐネットワーク情報技術革命へと進化の流れが変わった」と説明。
さらに話題はAIの進化に移り「目的・手段・合理性という意味においてはAIが人間を超える。むしろ、課題を設定する能力、目的を機械に与える能力において、人間のポテンシャルが問われている。それでは、コンピュータと人間の違いは何か」と問いかけました。

「コンピュータの認識力は無限に高めることができる。しかし、コンピュータには意識がない。アポロ11号の搭乗員が月面の彼方に地球が昇る姿を見て感動の涙を流した。これが意識であり、人間とコンピュータが決定的に違う点です」と説明。さらに「コンピュータには宗教がない。神の存在や仏の目線を感じる心、何か大きな力に支えられて生きているという謙虚な心。宗教とは認識するのではなく感ずる心です」と続けました。
AIの進化が世の中に与える影響として、75%の仕事がAIに取って代わられるという説や、天才にしか仕事がない時代が来るという説を紹介。全ての商品にICチップが埋め込まれ、店を出る際に自動的に決済される様になれば、レジが不要になる。店舗管理としては非常に効率的だが、その反面、社会的弱者からレジ打ちの仕事を奪うことになる。さらに、そういう労働から解放され、時間を得た人間はいったい何をするのか、社会イノベーションというのは、そういうことさえ視界に入れて、世の中を幸福にする構想をしなければならないと説きます。

「あらゆる企業にとって、IoT時代をどうやって生き抜くかが重要な課題だが、そこを一歩突き抜けて日本版IoTとも呼べる課題を意識しているのが日立だと思う。これが社会イノベーションです。今後起こり得る社会的課題をトータルに目を配って解決していくシステム設計が必要になってくる」(寺島氏)。
最後に「B2B型の効率的な仕組みを支えるという意識と、そこから生まれてくる善悪双方のポテンシャルを制御していく意識が、これからのIoTの時代に必要だろう」と訴え講演を終えました。